
Research
Main research fields
The Graduate School of Humanities consists of three courses: Course in European and American Languages and Cultures, Course of Chinese Language and Culture, and Course of Japanese Cultural Studies, which are integrally linked around the core academic fields of the humanities. Its main academic fields are linguistics, literature, philosophy, religious studies, arts and culture studies, history and social sciences, and language education. Following is a brief description of the research conducted in each academic field.
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廣瀬 富男教授 ( European and American Languages and Cultures, 言語学コース)
専門分野:理論言語学
「言語学」は、その名の通り、我々が思考したり話したりするのに日々使っている「コトバ」をその研究対象にします。また、コトバの様々な側面が研究の対象となるため、多くの「専門」に分かれています。私の専門は「統語論」という分野で、「いわゆる『文』というものは、特定の意味を『産出』(或いは『算出』)するのに、どのような要素が、それぞれどのような性質を持ち、全体としてどのように文を構成しているものなのか」という問いを探る作業を、言語一般および日本語をはじめとする個別の言語について行っています。いま気になっている現象は、副詞の「述語」用法です。例えば、朝食を食べる前であれば、「まだ朝食を食べていない」のように言い、食事中であれば、「まだ朝食を食べている」と言います。しかし、「朝食がまだの人」という、「まだ」が述語として現れている表現は、前者の文脈では使えますが、後者では使えません。なぜでしょう。「否定」(「~ない」)が鍵のように思えるのですが、「もう朝食を食べていない」とは言えても、「*朝食がもうの人」とは言えない…。このように、「目に見える」具体的な不思議について、「目に見えない」抽象的な要素や構造を操りながら、答えを求めて思考を巡らす——そんな作業を繰り返すことが、統語論者である私の日常になっています。
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彭 国躍教授 ( Chinese Language and Culture, 言語系)
専門分野:社会言語学,語用論,中国語学
自然言語は,人間の思考,感情をふくむ情報の貯蔵,整理と伝達をおこなう極めて複雑な記号システムです。それには2つの基本的な側面が含まれます。1つは脳内活動としての知覚,記憶,理解,判断,評価,推論などの認知作用にかかわる側面で,もう1つは外部社会における地域性,人間関係,発話場面,異文化接触などの環境作用にかかわる側面です。この2つの側面の相互作用が人間社会の豊かな言語活動,言語生活を織りなしています。私の研究は,中国語と日本語を中心に,言語のこの2つの側面の相互作用にフォーカスをあて,その実態を記述し,運用のメカニズムを解明することを目指しています。主な関心テーマとして,これまでは「中日の謝罪発話行為の機能と類型」「中国語の敬語・ポライトネスの歴史的変遷」「中日間のコミュニケーションにおける含意解釈の違いと誤解発生のメカニズム」などについて考察してきましたが,近年では「世相の鏡としての言語景観」「中国と日本の言語標準化・近代化問題」「言語変化の社会生態学的環境因子の分析」などについて調査研究を進めています。
日々の研究生活で励まされる言葉:「学如逆水行舟,不進則退」(学問は,ボートで逆流をさかのぼるが如し,こぎ手をゆるめれば押し流される)。
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「言語学」は、その名の通り、我々が思考したり話したりするのに日々使っている「コトバ」をその研究対象にします。また、コトバの様々な側面が研究の対象となるため、多くの「専門」に分かれています。私の専門は「統語論」という分野で、「いわゆる『文』というものは、特定の意味を『産出』(或いは『算出』)するのに、どのような要素が、それぞれどのような性質を持ち、全体としてどのように文を構成しているものなのか」という問いを探る作業を、言語一般および日本語をはじめとする個別の言語について行っています。いま気になっている現象は、副詞の「述語」用法です。例えば、朝食を食べる前であれば、「まだ朝食を食べていない」のように言い、食事中であれば、「まだ朝食を食べている」と言います。しかし、「朝食がまだの人」という、「まだ」が述語として現れている表現は、前者の文脈では使えますが、後者では使えません。なぜでしょう。「否定」(「~ない」)が鍵のように思えるのですが、「もう朝食を食べていない」とは言えても、「*朝食がもうの人」とは言えない…。このように、「目に見える」具体的な不思議について、「目に見えない」抽象的な要素や構造を操りながら、答えを求めて思考を巡らす——そんな作業を繰り返すことが、統語論者である私の日常になっています。
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自然言語は,人間の思考,感情をふくむ情報の貯蔵,整理と伝達をおこなう極めて複雑な記号システムです。それには2つの基本的な側面が含まれます。1つは脳内活動としての知覚,記憶,理解,判断,評価,推論などの認知作用にかかわる側面で,もう1つは外部社会における地域性,人間関係,発話場面,異文化接触などの環境作用にかかわる側面です。この2つの側面の相互作用が人間社会の豊かな言語活動,言語生活を織りなしています。私の研究は,中国語と日本語を中心に,言語のこの2つの側面の相互作用にフォーカスをあて,その実態を記述し,運用のメカニズムを解明することを目指しています。主な関心テーマとして,これまでは「中日の謝罪発話行為の機能と類型」「中国語の敬語・ポライトネスの歴史的変遷」「中日間のコミュニケーションにおける含意解釈の違いと誤解発生のメカニズム」などについて考察してきましたが,近年では「世相の鏡としての言語景観」「中国と日本の言語標準化・近代化問題」「言語変化の社会生態学的環境因子の分析」などについて調査研究を進めています。
日々の研究生活で励まされる言葉:「学如逆水行舟,不進則退」(学問は,ボートで逆流をさかのぼるが如し,こぎ手をゆるめれば押し流される)。
著者 | タイトル | 発行年 | 掲載雑誌名 | ページ番号 | DOI |
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山田昌裕 | 無助詞名詞句の格と運用法―平安期鎌倉期の実態より― | 2021 | 『日本語文法』21 巻1 号 | 4ー21 | ― |
Tomio Hirose and Hiroyuki Nawata | A Finer-Structural Analysis of the Japanese Politeness Morphology | 2021 | Japanese/Korean Linguistics 28 | 79-93 | ― |
夏海燕 | 「てくる」構文に見られる〈不快感〉について | 2022 | 認知言語学論考 | 81-97 | ― |
夏海燕 | 汉语自反类动词被动标记语法化原因探究 | 2022 | 古汉语研究 | 12ー23 | 10.19888/j.issn.1001-5442.2022.03.002 |
山田昌裕 | 格助詞「ガ」の用法拡大の様相―17世紀から明治大正期にかけて― | 2022 | 『論究日本近代語』2(出版社:勉誠出版) | 45-58 | ― |
彭国躍 | 中国語標準化の実態と政策の史話―システム最適化の時代要請 | 2022 | 『言語の標準化を考える―日中英独仏「対照言語史」の試み』(出版社:大修館書店) | 191-215 | ― |
山田昌裕 | (再考)古典語に見られる〈名詞句+副助詞〉の格―平安期の実態― | 2023 | 『青山語文』第53号 | 190-204 | 10.34321/22979 |
山田昌裕 | (再考)古典語に見られる〈名詞句+係助詞〉の格―平安期の実態― | 2023 | 『人文研究』209 | 47-69 | ― |
Atsushi Miura and Masahiko Komatsu | A closer look at the different rhythm metrics in L2 English: Inter- and intra-speaker variability and individual difference [研究ノート] | 2023 | “神奈川大学言語研究 Kanagawa University Studies in Language” | 107-120 | ― |
Tomio Hirose | Simplest Merge Is All We Have in Syntax: The End of Syntax Indeed? | 2023 | English Linguistics 39.2 | 229-255 | ― |
Umejima, Keita, Isso Nakamura, Naoki Fukui, Mihoko Zushi, Hiroki Narita, and Kuniyoshi L. Sakai | Differential networks for processing structural dependencies in human language: linguistic capacity vs. memory-based ordering | 2023 | Forntiers in Psychology | 10.3389/fpsyg.2023.1153871 |
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松本 和也教授 ( Japanese Cultural Studies, 日本文学)
専門分野:近現代文学,演劇,美術
私の研究は、太宰治(1909~1948)が現役当時、どのように読まれ、評価されていたかを調査・分析・考察するところから出発しました。もちろん、小説表現上の分析も同時に進めましたが、それを作家・作品の特徴として指摘することばかりでなく、それが当時の読みのモード、同時代読者の受容とどのように関わるかを論じてきました。
そうした問題関心によって、特に普遍的な魅力として語られることの多かった太宰治(研究)を、歴史的に捉え直す研究を積み重ねてきました。こうした大学院時代の研究は、『昭和十年前後の太宰治 〈青年〉・メディア・テクスト』(ひつじ書房、2009)にまとめましたが、これはその後の研究の出発点(起点)となりました。
その後、昭和戦前期に活動したさまざまな文学者にも視野を広げつつ、その前提となる当時の文学状況全体を「文学場」という概念によって研究対象とし、『昭和一〇年代の文学場を考える 新人・太宰治・戦争文学』(立教大学出版会、2015)、『文学と戦争 言説分析から考える昭和一〇年代の文学場』(ひつじ書房、2021)などにまとめました。
近年は、日本の近現代文学を軸として、関連領域である演劇や美術も視野に入れた研究を進めています。
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私の研究は、太宰治(1909~1948)が現役当時、どのように読まれ、評価されていたかを調査・分析・考察するところから出発しました。もちろん、小説表現上の分析も同時に進めましたが、それを作家・作品の特徴として指摘することばかりでなく、それが当時の読みのモード、同時代読者の受容とどのように関わるかを論じてきました。
そうした問題関心によって、特に普遍的な魅力として語られることの多かった太宰治(研究)を、歴史的に捉え直す研究を積み重ねてきました。こうした大学院時代の研究は、『昭和十年前後の太宰治 〈青年〉・メディア・テクスト』(ひつじ書房、2009)にまとめましたが、これはその後の研究の出発点(起点)となりました。
その後、昭和戦前期に活動したさまざまな文学者にも視野を広げつつ、その前提となる当時の文学状況全体を「文学場」という概念によって研究対象とし、『昭和一〇年代の文学場を考える 新人・太宰治・戦争文学』(立教大学出版会、2015)、『文学と戦争 言説分析から考える昭和一〇年代の文学場』(ひつじ書房、2021)などにまとめました。
近年は、日本の近現代文学を軸として、関連領域である演劇や美術も視野に入れた研究を進めています。
著者 | タイトル | 発行年 | 掲載雑誌名 | ページ番号 | DOI |
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鈴木宏枝 | 太平洋戦争下の翻訳児童文学への「児童読物改善ニ関スル指示要綱」の影響-The Chinese Ink Stick(1929)と『支那の墨』(1942)を手がかりに | 2021 | 『白百合女子大学児童文化研究センター論文集』 | 35-53 | 10.24510/00000494 |
鈴木宏枝 | 分断と排除のHarry Potter -Voldemortはなぜ悪なのか | 2021 | 『神奈川大学大学院 言語と文化論集』 | 167-184 | ― |
鈴木宏枝 | The Ideology of Sex in Harry Potter: Innocent Lily and Immoral Merope | 2022 | 『英語圏児童文学 Tinker Bell』 | 51-62 | ― |
松本和也 | 谷崎潤一郎「春琴抄」同時代受容分析 | 2023年(92巻12号) | 『国語国文』 | 34-51 | ― |
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上原 雅文教授 ( Japanese Cultural Studies, 日本思想)
専門分野:倫理学,日本倫理思想史
「思想」とは,世界や人生についての考え方(世界観,人生観)と,それと連動した人間の生き方についての総合的な観念体系のことです。主に哲学や宗教や芸術などにおいて表現されています。思想の研究においては,人間とは何か,如何に生くべきかという哲学・倫理学的な問いを基盤に,現代の我々自身の生き方・考え方を問うことが中心となります。そのためには,思想の歴史すなわち「思想史」を研究対象とすることが不可欠です。現代において生きられている思想の形成過程を探究することで,現代の思想を相対化し,より根源的に生き方・考え方を問い直すことができるからです。また無意識裡に囚われている自国の思想バイアスを避けるためにも「比較思想」的な視点を持つことも欠かせません。
私の専門は「日本倫理思想史」です。日本の思想は,神道や仏教,武士道,儒学・国学,近代の日本哲学などの理論書,および神話・物語や儀礼・習俗などで表現されてきました。それらのうちの特定のテキストを解釈学的方法で読解し,倫理思想を剔出することが主な研究内容です。近年は,鎌倉時代の一遍の思想を解明すべく『播州法語集』『一遍聖絵』の読解に取り組んでいます。一遍は踊念仏を広めつつ各地を遊行し続けた浄土思想家ですが,法然や親鸞とは異なり,神道や密教・禅宗の影響も見られる複合的で独創的な思想の持ち主です。その思想の解明は,多様な宗教を融合・共存させる原理の解明にもつながるのではないかと考えています。それと連動して,共同研究では,神道や仏教や儒学など重層的・雑居的と見なされている日本思想をメタレベルで原理的に考察し,日本思想の基軸あるいは深層構造を解明することにも取り組んでいます。
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「思想」とは,世界や人生についての考え方(世界観,人生観)と,それと連動した人間の生き方についての総合的な観念体系のことです。主に哲学や宗教や芸術などにおいて表現されています。思想の研究においては,人間とは何か,如何に生くべきかという哲学・倫理学的な問いを基盤に,現代の我々自身の生き方・考え方を問うことが中心となります。そのためには,思想の歴史すなわち「思想史」を研究対象とすることが不可欠です。現代において生きられている思想の形成過程を探究することで,現代の思想を相対化し,より根源的に生き方・考え方を問い直すことができるからです。また無意識裡に囚われている自国の思想バイアスを避けるためにも「比較思想」的な視点を持つことも欠かせません。
私の専門は「日本倫理思想史」です。日本の思想は,神道や仏教,武士道,儒学・国学,近代の日本哲学などの理論書,および神話・物語や儀礼・習俗などで表現されてきました。それらのうちの特定のテキストを解釈学的方法で読解し,倫理思想を剔出することが主な研究内容です。近年は,鎌倉時代の一遍の思想を解明すべく『播州法語集』『一遍聖絵』の読解に取り組んでいます。一遍は踊念仏を広めつつ各地を遊行し続けた浄土思想家ですが,法然や親鸞とは異なり,神道や密教・禅宗の影響も見られる複合的で独創的な思想の持ち主です。その思想の解明は,多様な宗教を融合・共存させる原理の解明にもつながるのではないかと考えています。それと連動して,共同研究では,神道や仏教や儒学など重層的・雑居的と見なされている日本思想をメタレベルで原理的に考察し,日本思想の基軸あるいは深層構造を解明することにも取り組んでいます。
著者 | タイトル | 発行年 | 掲載雑誌名 | ページ番号 | DOI |
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上原雅文 | 幕末長州藩の思想 | 2020 | 『人文研究』第200号 | 1-31 | ― |
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新木 秀和教授 ( European and American Languages and Cultures, 歴史・社会コース)
専門分野:ラテンアメリカ近現代史,ラテンアメリカ地域研究
これまで私は欧米言語文化専攻スペイン語圏言語文化コースで大学院生の研究を指導してました。それらの方々の研究テーマはボリビアの伝統医療、マリオ・ベネデッティの文学と政治、シモン・ボリーバルの思想、メキシコ国旗の歴史などと多岐にわたります。スペイン語や英語、日本語によるテキストを一緒に読み解きながら自分が書き上げる気持ちで論文指導に当たり、よい勉学の機会となりました。
新しくスタートする人文学研究科の歴史・社会コースでは、広義の欧米や日本などを研究対象とする教員が指導を担います。歴史学と人文社会科学の専門家が協働しながら複合的な教育研究の機会が提供され、院生が各自の研究テーマを深められることが期待されます。
大学院時代に私は、地域研究専攻の修士課程と史学専攻の博士課程に在籍しました。地域研究も歴史学も総合的性格が強い学問領域ですが、ラテンアメリカ地域研究および近現代史の視点で、アンデス地域のエクアドルを対象に研究を行ってきました。インタビューを交えて現地調査を繰り返し、社会運動や連帯経済、都市や環境、国際関係などのテーマを扱い、『エクアドルを知るための60章』をまとめる際にも役立ちました。学部や大学院の教育ではラテンアメリカやスペイン語圏に関する知識と情報を蓄えつつ視野を広げ、現代社会を多角的に分析しようと心がけています。こうして10年ほど前に『先住民運動と多民族国家』という一書をまとめ、神奈川大学人文学研究所から出版する機会に恵まれました。それらの著作については「神大の先生」に紹介がありますので、ご参考いただければ幸いです。ただ、扱ったテーマの多くが20世紀半ば以降に顕在化した事象であり、歴史研究の対象になじみにくいという思いが残りました。
そこで、グローバル課題の歴史研究に取り組みたいとの思いが強くなり、5年ほど前から感染症と社会の関係というテーマに取り組んでいます。スペイン・インフルエンザに関する史資料を読んでいたら、2020年にコロナ・パンデミックが始まって驚きました。私たちの日常が過去や現在の世界情勢につながっていることが実感されたからです。感染症をめぐる諸相をアメリカ大陸との関係で議論することは日本ではまだ十分に行われておらず、様々な切り口で探究できる可能性があります。今後とも歴史と現代をつなぐ研究を続けたいと考えています。
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これまで私は欧米言語文化専攻スペイン語圏言語文化コースで大学院生の研究を指導してました。それらの方々の研究テーマはボリビアの伝統医療、マリオ・ベネデッティの文学と政治、シモン・ボリーバルの思想、メキシコ国旗の歴史などと多岐にわたります。スペイン語や英語、日本語によるテキストを一緒に読み解きながら自分が書き上げる気持ちで論文指導に当たり、よい勉学の機会となりました。
新しくスタートする人文学研究科の歴史・社会コースでは、広義の欧米や日本などを研究対象とする教員が指導を担います。歴史学と人文社会科学の専門家が協働しながら複合的な教育研究の機会が提供され、院生が各自の研究テーマを深められることが期待されます。
大学院時代に私は、地域研究専攻の修士課程と史学専攻の博士課程に在籍しました。地域研究も歴史学も総合的性格が強い学問領域ですが、ラテンアメリカ地域研究および近現代史の視点で、アンデス地域のエクアドルを対象に研究を行ってきました。インタビューを交えて現地調査を繰り返し、社会運動や連帯経済、都市や環境、国際関係などのテーマを扱い、『エクアドルを知るための60章』をまとめる際にも役立ちました。学部や大学院の教育ではラテンアメリカやスペイン語圏に関する知識と情報を蓄えつつ視野を広げ、現代社会を多角的に分析しようと心がけています。こうして10年ほど前に『先住民運動と多民族国家』という一書をまとめ、神奈川大学人文学研究所から出版する機会に恵まれました。それらの著作については「神大の先生」に紹介がありますので、ご参考いただければ幸いです。ただ、扱ったテーマの多くが20世紀半ば以降に顕在化した事象であり、歴史研究の対象になじみにくいという思いが残りました。
そこで、グローバル課題の歴史研究に取り組みたいとの思いが強くなり、5年ほど前から感染症と社会の関係というテーマに取り組んでいます。スペイン・インフルエンザに関する史資料を読んでいたら、2020年にコロナ・パンデミックが始まって驚きました。私たちの日常が過去や現在の世界情勢につながっていることが実感されたからです。感染症をめぐる諸相をアメリカ大陸との関係で議論することは日本ではまだ十分に行われておらず、様々な切り口で探究できる可能性があります。今後とも歴史と現代をつなぐ研究を続けたいと考えています。
著者 | タイトル | 発行年 | 掲載雑誌名 | ページ番号 | DOI |
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Ritsuko Kurita | Creating Community Feelings Among Impoverished People: An Ethnography of Civil Groups in Urban Australia | 2021 | Urbanities: Journal of Urban Ethnography 11(2) | 20-33 | ― |
山本信太郎 | イングランド宗教改革と大学 | 2021 | 大学史研究 | 3ー22 | ― |
Ritsuko Kurita | Coping with Welfare Shame: Responses of Urban Indigenous and Non-Indigenous Peoples to “Mutual Obligation” Requirements in Australia | 2022 | POLAR: Political and Legal Anthropology Review 45 (2) | 171-185 | 10.1111/plar.12503 |
Umezaki Kahori | “La saya es nuestra”: los pasos sonoros hacia la reivindicación de los afrobolivianos | 2022 | EntreDiversidades, Vol. 9 Núm. 1(18) | 383-408 | 10.31644/ED.V9.N1.2022.A16 |
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中村 ジェニス准教授 ( European and American Languages and Cultures, 言語教育・応用言語学コース)
専門分野:バイリンガーリズム・バイリテラシー,言語習得,社会言語学
多言語国家で育った私にとって、複数言語を話すことはごく自然なことだと思っていた。しかし、日本に住み始めてからその考えが変わった。日本でバイリンガルになることは簡単ではないという気付きが、私の研究の始まりとなった。まだ単一言語社会というイメージが強い日本だが、低年齢で二つ以上の言語を習得する人が増加している。外国人との多文化共生を目指す日本では、バイリンガリズムが重要な研究領域になっており、バイリンガリズムの側面から言語教育を捉え直す必要がある。
2006年から、日本におけるバイリンガリズムを心理言語学、言語政策、社会言語学的アプローチで研究してきた。乳幼児を対象にした同時二言語発達の縦断的研究、バイリンガル児童を対象にしたバイリテラシー研究、外国人の親を対象にしたファミリー・ランゲージ・ポリシー(Family Language Policy)の研究、成人になった国際結婚家庭の子どもを対象にしたマイノリティ言語保持とアイデンティティ研究など幅広いテーマに取り組んでいる。日本におけるバイリンガル育成を成功させるための個人的要因と環境的要因を明らかにすることが私の研究の目標である。現在まで、国際結婚と外国人家庭でのバイリンガリズムの研究が中心だったが、日本人家庭でのバイリンガリズムにも最近注目するようになった。
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多言語国家で育った私にとって、複数言語を話すことはごく自然なことだと思っていた。しかし、日本に住み始めてからその考えが変わった。日本でバイリンガルになることは簡単ではないという気付きが、私の研究の始まりとなった。まだ単一言語社会というイメージが強い日本だが、低年齢で二つ以上の言語を習得する人が増加している。外国人との多文化共生を目指す日本では、バイリンガリズムが重要な研究領域になっており、バイリンガリズムの側面から言語教育を捉え直す必要がある。
2006年から、日本におけるバイリンガリズムを心理言語学、言語政策、社会言語学的アプローチで研究してきた。乳幼児を対象にした同時二言語発達の縦断的研究、バイリンガル児童を対象にしたバイリテラシー研究、外国人の親を対象にしたファミリー・ランゲージ・ポリシー(Family Language Policy)の研究、成人になった国際結婚家庭の子どもを対象にしたマイノリティ言語保持とアイデンティティ研究など幅広いテーマに取り組んでいる。日本におけるバイリンガル育成を成功させるための個人的要因と環境的要因を明らかにすることが私の研究の目標である。現在まで、国際結婚と外国人家庭でのバイリンガリズムの研究が中心だったが、日本人家庭でのバイリンガリズムにも最近注目するようになった。
著者 | タイトル | 発行年 | 掲載雑誌名 | ページ番号 | DOI |
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Janice Nakamura | English parenting for Japanese parents: A critical review of advice in self-help books for raising bilingual children in Japan | 2021 | English Today 39(1) | 47-52 | 10.1017/S0266078421000286 |
Yuri Hosoda and David Aline | Establishing joint attention with multimodal resources in lingua franca guided tours | 2021 | Learning Culture and Social Interaction, 31, Part A | Article 100547 p. 1–20 | 10.1016/j.lcsi.2021.100547 |
Yuri Hosoda and David Aline | Deployment of the formulaic utterance “how about ∼ ” in task-based second language classroom discussions | 2021 | Intercultural Pragmatics 18(4) | 425–446 | 10.1515/ip-2021-4001 |
Janice Nakamura | COVID-19 Signs in Tokyo and Kanagawa: Linguistic landscaping for whom? | 2022 | Asia-Pacific Social Science Review 22(3) | 80-94 | ― |
Yuri Hosoda and David Aline | Deployment of I don’t know and wakannai in second language classroom peer discussions | 2022 | Text & Talk - An Interdisciplinary Journal of Language Discourse Communication Studies, 42 | 27–49 | 10.1515/text-2019-0275 |
Yuichi Suzuki, Satoko Yokosawa, and David Aline | The role of working memory in blocked and interleaved grammar practice: Proceduralization of L2 syntax | 2022 | Language Teaching Research 26 | 671–695 | 10.1177/1362168820913985 |
Janice Nakamura and Suzanne Quay | The development of English writing in bilingual children attending weekend school in Japan during the COVID-19 pandemic | 2023 | Journal of Home Language 6(1), 2 | 1ー16 | 10.16993/jhlr.50 |
Suzanne Quay and Janice Nakamura | Factors affecting home language literacy development in Japanese-English bicultural children in Japan | 2023 | Languages 8, 251 | 1ー21 | 10.3390/languages8040251 |
Yuri Hosoda and David Aline | Differentiating Winners and Losers Through Question Structures in Post-Competition Televised Media Interviews | 2023 | 人文研究209 | 1ー23 | ― |
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角山 朋子准教授 ( European and American Languages and Cultures, 文学・思想コース)
専門分野:オーストリア・中欧デザイン史,芸術思想
芸術文化の探求から世界へ
芸術には,音楽,絵画,彫刻,映像,演劇など多くのジャンルがあり,いずれもさまざまな材料,技法,様式などによって,人間が美を表現したり鑑賞したりする活動です。そして,文化とは人びとが創造し,社会の中で継承し発展させてきた営みの総体です。近年では,美学,美術史,ミュゼオロジー,デザイン学,表象文化論,カルチュラル・スタディーズなどの諸学問領域において,芸術と文化を横断する視座の広がりが顕著であり,資料・理論・制度に関わる多角的な研究が試みられています。混迷する現代世界で,人間と社会をより深く理解し,その創造的活動の所産を未来に繋げる学問として,芸術文化学が果たすべき役割は大きいでしょう。
私が専攻するデザイン史学は,デザインのもつ政治的,経済的,社会的,技術的,文化的意味と役割について歴史的に学問的検討を加える学問領域です。隣接する美術史や視覚文化研究をはじめ,ナショナリズム研究,ジェンダー研究等の成果を取り入れつつ学際的かつグローバルに展開しています。私はこれまで20世紀初頭のウィーンの高級工芸品会社「ウィーン工房」を主な分析対象とし,世紀転換期オーストリアのデザインと社会,政治の関係性,また,ウィーン工房に現れた今日的なブランド企業の萌芽を明らかにしてきました。近年,経済産業省・特許庁は「デザインのちからをブランドの構築やイノベーションの創出に活用する経営手法」(https://www.jpo.go.jp/introduction/soshiki/design_keiei.html)としてデザイン経営を推進していますが,ウィーン工房には今日的なデザイン経営の手腕が見られます。
現在,私はデザイン経営と都市文化の関係性,またデザインと身体表現といったテーマに関心があります。デザイン史研究は,芸術文化を対象とする学問の中でも,特に身近な生活世界に関わる領域です。本研究科では,できるかぎり履修者の関心に応じて講義や演習を展開しています。皆さんには,大学院修了後も日本で,そして世界で,さまざまな場面で専門的な知見を生かしていただきたいと願っています。是非ご一緒に,芸術文化の諸相を探求していきましょう!
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芸術文化の探求から世界へ
芸術には,音楽,絵画,彫刻,映像,演劇など多くのジャンルがあり,いずれもさまざまな材料,技法,様式などによって,人間が美を表現したり鑑賞したりする活動です。そして,文化とは人びとが創造し,社会の中で継承し発展させてきた営みの総体です。近年では,美学,美術史,ミュゼオロジー,デザイン学,表象文化論,カルチュラル・スタディーズなどの諸学問領域において,芸術と文化を横断する視座の広がりが顕著であり,資料・理論・制度に関わる多角的な研究が試みられています。混迷する現代世界で,人間と社会をより深く理解し,その創造的活動の所産を未来に繋げる学問として,芸術文化学が果たすべき役割は大きいでしょう。
私が専攻するデザイン史学は,デザインのもつ政治的,経済的,社会的,技術的,文化的意味と役割について歴史的に学問的検討を加える学問領域です。隣接する美術史や視覚文化研究をはじめ,ナショナリズム研究,ジェンダー研究等の成果を取り入れつつ学際的かつグローバルに展開しています。私はこれまで20世紀初頭のウィーンの高級工芸品会社「ウィーン工房」を主な分析対象とし,世紀転換期オーストリアのデザインと社会,政治の関係性,また,ウィーン工房に現れた今日的なブランド企業の萌芽を明らかにしてきました。近年,経済産業省・特許庁は「デザインのちからをブランドの構築やイノベーションの創出に活用する経営手法」(https://www.jpo.go.jp/introduction/soshiki/design_keiei.html)としてデザイン経営を推進していますが,ウィーン工房には今日的なデザイン経営の手腕が見られます。
現在,私はデザイン経営と都市文化の関係性,またデザインと身体表現といったテーマに関心があります。デザイン史研究は,芸術文化を対象とする学問の中でも,特に身近な生活世界に関わる領域です。本研究科では,できるかぎり履修者の関心に応じて講義や演習を展開しています。皆さんには,大学院修了後も日本で,そして世界で,さまざまな場面で専門的な知見を生かしていただきたいと願っています。是非ご一緒に,芸術文化の諸相を探求していきましょう!
著者 | タイトル | 発行年 | 掲載雑誌名 | ページ番号 | DOI |
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秋山珠子 | 中国逸民の遺伝子─映像演劇『隔離された屋根』をめぐって | 2022 | 神奈川大学評論(101号) | 155-159 | ― |
秋山珠子、諏訪敦彦、山城知佳子、 章夢奇(ジャン・モンチー)、村井まや子 | [ディスカッション]物語・環境・創作をめぐって | 2023 | 神奈川大学評論(102号) | 137-156 | ― |