「人文学研究科開設記念シンポジウム:日本文化を拓く—その可能性の沃野—」を終えて

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「人文学研究科開設記念シンポジウム:日本文化を拓く
—その可能性の沃野—」を終えて

2024年4月に人文学研究科が開設されることを記念して「日本文化を拓く—その可能性の沃野—」と題するシンポジウムが、2023年11月24日、みなとみらいキャンパス米田吉盛記念ホール及び米田吉盛記念講堂にて開催されました(主催:外国語学研究科、共催:神奈川大学、後援:国際日本学部・外国語学部・人文学研究所・人文学会)。
神奈川大学小熊誠学長によるご挨拶、外国語学研究科辻子委員長より趣旨説明を行なったのち、講師としてお招きした田中優子氏(法政大学名誉教授・法政大学前総長・法政大学江戸東京センター特任教授)とロバート キャンベル氏(早稲田大学特命教授・早稲田大学国際文学館顧問・東京大学名誉教授)の講演及び対談を行いました。深澤徹先生(司会)、上原雅文先生・藤澤茜先生(コメンテーター)にもご登壇いただきました。
田中優子氏の講演は「循環する言葉とものと文化—江戸時代の人々はどのように都市と文化を創っていた—」という題目で、江戸時代は1560年代に完成したグローバリゼーションに独自の対応をしつつ循環システムを整備することによってもたらされた持続可能社会であったことが多様な例を挙げて説明されたほか、古いものから新しいものを生み出す形で歌舞伎・物語・絵画等々の創造を行なっていた文化の循環についてもお話いただきました。この講演に対して、浮世絵・歌舞伎を中心とする日本文化の専門家の視点から藤澤先生にコメントをいただきました。

キャンベル氏の講演は「武器にもシェルターにもなる言葉と『日本』」という題目で、ウクライナの詩人オスタップ・スリヴィンスキー氏が集めた名もなき人々の証言から物語が生まれていく過程や戦争という不条理のもと言葉や価値観が変容していく在り様についてお話しくださいました。この講演に対して、人々の語りから文学が発生するプロセスについて上原先生から日本思想史の観点からコメントをいただきました。田中優子氏の講演は「循環する言葉とものと文化—江戸時代の人々はどのように都市と文化を創っていた—」という題目で、江戸時代は1560年代に完成したグローバリゼーションに独自の対応をしつつ循環システムを整備することによってもたらされた持続可能社会であったことが多様な例を挙げて説明されたほか、古いものから新しいものを生み出す形で歌舞伎・物語・絵画等々の創造を行なっていた文化の循環についてもお話いただきました。この講演に対して、浮世絵・歌舞伎を中心とする日本文化の専門家の視点から藤澤先生にコメントをいただきました。

講演に続く対談においては、参加者から出された質問をもとに様々なトピックについて、活発な議論がなされました。そのトピックは、感染症流行や戦争という状況の中で文学・芸術が生まれる過程やそれらの対象に対する研究者としての向き合い方、江戸時代の教育と現代の教育に係わる問題、女性が働く環境の変化、フェミニズム・ジェンダー論、日本語と文化・思想・政治の関係など多岐に亘るものでした。

講演・対談を通して、「日本文化を拓く」可能性を秘めた数々のテーマが浮かび上がりました。こうしたテーマに対して国際的な視野をもって様々な観点から日本を見ることが、新たな人文学研究科・日本文化専攻における教育研究活動の重要な柱となるであろうと思います。400名強の多くの参加者が集う極めて充実した内容のシンポジウムとなりました。